シネマガジン

インタビュー・コラム

名画座人生、初めての特集〜哀悼・京マチ子/のむみち

去る5月某日、京マチ子さんの訃報が流れました。その時私は、国立映画アーカイブの深作欣二監督特集で『カミカゼ野郎 真昼の決斗』を観て大木実のカッコ良さにシビレていたのですが、観終わって外に出て携帯の電源を入れたところ、友人から悲痛な報せが......。

あの瞬間の動揺をどう表現したらよいのかわかりません。

私の名画座人生は2009年に始まりますが、「新文芸坐」に初めて足を踏み入れた後、しばらくして「京マチ子特集」が始まり、私は初めて特集チラシを片手に「よし、この特集に通おう」と決意をしたのです。仕事をしながら、上映作品が日替わり二本立てで変わる特集に通うのは思ったより大変なことで、コンプリートは到底できなかったものの、半分くらいは通ったと記憶しています。

そんな訳で、京マチ子には思い入れがあるのです。

その後も数々の京マチ子作品を観ていく内、そのダイナミックな美しさ、エロティックだがイヤらしくはない、カラッとした色気にすっかり魅了されました。

一般的には、京マチ子というと『羅生門』や『雨月物語』の時代物の和なイメージが強いようですが、私が好きな京マチ子は、『あにいもうと』や『甘い汗』、そして最近発掘され、亡くなる直前の「京マチ子映画祭」で上映された『赤線の灯は消えず』など、現代もので男運があまりよくない役の京マチ子、『夜の蝶』や『夜の素顔』など、ライバルの女たち(大抵山本富士子か若尾文子のどちらか)と火花を散らす京マチ子です。センシティブで健気な役で涙を誘う『いとはん物語』や、天然系の役の『婚期』も大好き。

訃報が立て続けに流れる昨今ですが、京マチ子のそれは、これまでに接した他の誰の訃報より堪えました。亡くなる直前に開催された「京マチ子映画祭」(現在地方巡回中)は、再び8月に恵比寿ガーデンシネマにて追悼開催されるようです。

そう、京マチ子はこれまでもそしてこれからも、フィルムの中で生き続けるのです。

京マチ子のすべて
のむみちさんが名画座へ通い始めるきっかけとなった特集のチラシ(提供:新文芸坐)
京マチ子追悼映画祭
『京マチコ追悼映画祭』
(2019年8月2~15日、恵比寿ガーデンシネマにて。写真をクリック→スケジュールへ)
のむみち Nomumichi
南池袋の古書店・古書往来座の店員。都内名画座のスケジュールを一覧にした月刊フリーペーパー『名画座かんぺ』の発行人でもあるほか、『名画座手帳』の企画監修など、さまざまな活動を通して名画座で映画を観る楽しみを伝えている。2018年、宝田明著『銀幕に愛をこめて ぼくはゴジラの同期生』(筑摩書房)の構成を担当。週刊ポスト(小学館)にて「週刊名画座かんぺ」を連載中。
Twitter: https://twitter.com/conomumichi

このページの上部へ戻る