映画フィルム作品【上映企画】

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Fシネマ・ツアー2016
35ミリフィルムでみる日本映画傑作選

近年、映画上映のデジタル化が進み、多くの映画館・劇場からフィルム映写機が撤去され、35ミリフィルムで映画をみる機会が急速に失われています。しかし、100年をこえる映画の歴史の中で、デジタル化された作品はごくわずかにすぎず、日本映画の名作の多くは現在もなお、フィルムでしかみることができません。
本企画では、日本映画の名作をオリジナルの形態である35ミリフィルムで上映し、フィルム上映の鑑賞機会を提供するとともに、その魅力を伝えます。
映画映像受容手段が多様になり、“スクリーン体験”は、多様な映像受容手段のひとつとなりましたが、現在も映画受容の主軸をなすものであることに変わりはありません。特に、高齢者にとっては大きなスクリーンで映画をみることは大きな喜び、楽しみであり、本企画によって、全国各地の会場で、日本映画の名作からなる魅力的なプログラムが上映されることで、高齢者に生き生きとした時間を提供することができ、単なる文化事業を越えた効果を期待することができます。また、新しい映画しかみたことがない若い世代にも積極的にアプローチをすることにより、日本映画の魅力を発見する機会を提供し、過去の芸術遺産への関心を喚起することができると考えています。
多くの映画館やシネマテークでは、35ミリの映写機を使用する機会が減りつつあります。本企画は、映写機材を活用し、メンテナンスを行う契機ともなり、急速に低下しつつある映写技師のフィルム上映技術を維持し、伝承する機会となり、フィルムの上映環境を確保、維持する一助ともなると考えています。

日程地域/会場上映企画
2016年1月30日[土]~2月5日[(金]大分県/大分シネマ5 bis女流文学特集
2016年2月11日[木・祝]~13日[土]群馬県/高崎電気館昭和歌謡映画特選
2016年3月12日[土]~18日[金]広島県/シネマ尾道松本清張×野村芳太郎

女流文学特集

女性らしいナイーブな視点を感じさせる女流文学の映画化名作を特集。うち3本を戦前の作品とした。なおかつ、3本の作品に、日本映画最大の名女優・高峰秀子が出演しており、子役時代の高峰秀子の魅力を楽しめるものにもなっている。

作品紹介

  • 綴方教室

    [1938年/88分/東宝]
    監督:山本嘉次郎/出演:高峰秀子、徳川夢声/原作:豊田正子

    子どもらしい素直さが話題となり当時大ベストセラーとなった小学校4年生の豊田正子の26篇の文集をもとに、山本嘉次郎監督が映画化した名作。両親とともに長屋に暮らす主人公が貧しい家庭について書いた作文がもとで、父親は職を失いかけるが…。舞台は、東京の下町、葛飾・四つ木。山本嘉次郎の演出はドキュメンタリー風の演出と、高峰秀子(14歳)の生き生きとして自然な演技が素晴らしい。黒澤明が製作主任として名を連ねている。

  • 樋口一葉

    [1939年/83分/東宝]
    監督:並木鏡太郎/出演:山田五十鈴、高田稔

    マキノ映画の無声映画時代にデビューし活躍した並木鏡太郎監督による樋口一葉の伝記映画。一葉を凛として演じるのは、『祇園の姉妹』『鶴八鶴次郎』などで絶頂期にあった山田五十鈴。新聞小説家・半井桃水にほのかな恋情を寄せつつも実らず、母と妹との極貧生活の中、小説で身を立てようと必死で書き続ける一葉の悲しい運命を叙情的なタッチで描いている。劇中劇「たけくらべ」のみどり役で高峰秀子が出演している。

  • 花つみ日記

    [1939年/73分/東宝]
    監督:石田民三/出演:高峰秀子/原作:吉屋信子

    女性映画の名手・石田民三が吉屋信子の少女小説を映画化。大阪・宗右衛門町を舞台に、花街の置屋の娘・栄子と、女学校に東京からの転校してきたみつるとの友情の物語が綴られる。主演は15歳の高峰秀子。多感で繊細な少女の心理をみずみずしいタッチで描いた、乙女心をくすぐる愛らしい作品である。空襲に遭う前の大阪の街並みが映し出された貴重な映像としても価値ある一本。加藤治子のデビュー作(当時の芸名は御舟京子)でもある。

  • ノンちゃん雲に乗る

    [1955年/84分/新東宝] ※デジタル上映
    監督:倉田文人/出演:鰐淵晴子、原節子、藤田進、徳川夢声

    石井桃子の児童文学の映画化。8歳の少女・ノンちゃんの空想を描いたファンタジックな作品。これは、『東京物語』(1953年/小津安二郎)『山の音』(1954年/成瀬巳喜男)の後、体調を崩して映画を離れ、引退が囁かれていた原節子の復帰作であり、原が初めて母親役を演じた作品でもある。製作は原の義兄・熊谷久虎で、熊谷と同じ大分県出身で熊谷とともに芸研プロダクションの設立に関わった倉田文人が監督を務めている。

昭和歌謡映画特選

昭和の高度経済成長期に流行した歌謡曲を下敷きにした青春映画の名作。主題歌を含め、その時代の若者のひたむきな生き方がみずみずしく甦る。

作品紹介

  • © 1963 松竹株式会社

    下町の太陽

    [1963年/86分/松竹]
    監督:山田洋次/出演:倍賞千恵子、勝呂誉

    山田洋次監督の監督第二作で、この後山田映画の常連となる倍賞千恵子との初コンビ作。荒川沿いの石鹸工場で働く町子は、恋人がいるが、工員の良介に言い寄られ、断る。母のいない五人家族の町子の弟の万引き事件が起きるが、その時頼りになってくれたのは恋人ではなく、良介だった。倍賞千恵子が歌った同名の曲の大ヒットを受けて企画された、爽やかな青春映画。懸命に生きる庶民を描く山田洋次らしい傑作。

  • その人は昔

    [1967年/99分/東宝]
    監督:松山善三/出演:舟木一夫、内藤洋子

    舟木一夫のデビュー三周年で企画されたレコード「心のステレオ・その人は昔・東京の空の下で」をモチーフにした歌謡映画。北海道で出会った純朴な若い青年と少女が、希望を求めて東京へ駆け落ちするが、冷たい都会に翻弄されるというストーリーを、舟木一夫と内藤洋子の主演で描いている。原作・脚色・監督は、松山善三。松山は、主題曲「その人は昔」の作詞も務めている(作曲は船村徹)。

  • 赤いハンカチ

    [1964年/98分/日活]
    監督:舛田利雄/出演:石原裕次郎、浅丘ルリ子

    石原裕次郎の同名のヒット曲をタイトルに、舛田利雄が監督した「日活ムード・アクション」の代表作。洋画の名作『第三の男』を下敷きにしたストーリー。事件の参考人を射殺して辞職した元刑事が被害者の娘に恋をするが、相棒に疑惑が生じ、事件の究明に乗り出す…。共演は、浅丘ルリ子と二谷英明。東京オリンピックの年、1964年のお正月映画として公開され(1月3日)、大ヒット。石原裕次郎の最高傑作の1本。

  • © 1975 松竹株式会社

    昭和枯れすすき

    [1975年/87分/松竹]
    監督:野村芳太郎/出演:高橋英樹、秋吉久美子

    結城昌治の原作「ヤクザな妹」を新藤兼人が脚色、さくらと一郎が歌って大ヒットした同名の歌謡曲が随所に流れる歌謡映画として作られた。監督は『砂の器』や『事件』で絶頂期にあった野村芳太郎。撮影は野村の作品に欠かせぬ川又昂が担当している。生活が乱れた妹と、妹思いの刑事の兄の物語が叙情的に綴られる。主演は高橋英樹と、『赤ちょうちん』などで新時代の女優として脚光を浴びていた秋吉久美子。

松本清張×野村芳太郎

松本清張の小説から映画らしい魅力を引き出した野村芳太郎監督の作品の特集。娯楽映画でありながら、「弱き人間の悲しみ」を描いた人間ドラマとして、日本映画の真髄を感じさせるプログラム。

作品紹介

  • © 1958 松竹株式会社

    張込み

    [1958年/116分/松竹]
    監督:野村芳太郎/出演:大木実、高峰秀子

    野村芳太郎監督による松本清張原作映画の記念すべき第一作。逃走した殺人犯が昔の恋人のもとにやって来ると踏んだ刑事二人が、東京から佐賀にやって来る。今は別の男の後妻となっている女の住む家の前の旅館に部屋をとり、夏のうだるような暑さの中、犯人が現れるのを待ち張込みを続けるが、貞淑の雰囲気の女は殺人犯の元恋人とはとても思えないのだった…。大木実、宮口精二、高峰秀子が主演。全篇、佐賀ロケを敢行。

  • © 1961 松竹株式会社

    ゼロの焦点

    [1961年/95分/松竹]
    監督:野村芳太郎/出演:久我美子、高千穂ひづる

    新婚7日目にして失踪した夫の消息をつきとめようとする新妻が、やがて、かつて巡査をしていた夫の過去の秘密を知ってゆく…。松本清張の代表作を、久我美子、高千穂ひづる、有馬稲子の三大女優を主演に迎え映画化。脚本は、野村芳太郎と、監督デビュー前の山田洋次。二人は、この作品に引き続いて『砂の器』の脚本を仕上げるが、その映画化に会社は難色を示し、製作までに10年以上の歳月を要することになる。

  • © 1974 松竹株式会社/橋本プロダクション

    砂の器

    [1974年/143分/松竹]
    監督:野村芳太郎/出演:加藤剛、丹波哲郎、森田健作

    ハンセン病によって故なき差別を受けた少年が成長して大作曲家となり自らの過去を消し去るために殺人を犯し、その真相を二人の刑事が追う…。暗い宿痾を背負った人間を日本の四季の自然の中にとらえた川又昂のみごとな撮影と、芥川也寸志による交響曲「宿命」の力も相俟って、ミステリーの枠を超えた日本映画史に残る名作が誕生した。犯人の作曲家に加藤剛、刑事に丹波哲郎と森田健作。加藤嘉、島田陽子、緒形拳らが出演。渥美清が1シーン登場している。

主催:Fシネマ・ツアー実行委員会/開催会場
共催:一般社団法人コミュニティシネマセンター
協力:東京国立近代美術館フィルムセンター(予定)
支援:芸術文化振興基金

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