Q.長年使用していない映写機を作動させたいのですが、電源を入れて回しても問題ないですか?
加藤元治氏の回答
基本的には下記点検を行います。
[1]動作確認
- 映写機を通電する前に、手でモーターノブを回し、映写機が重たくなっていないか確認する。
- オイルゲージが見える映写機は、オイルが入っているかチェックする。年数が経っている映写機はできる限りオイル交換をする。
- 上部マガジンおよび下部マガジンのシャフトが手で回すことができるかチェックする。
- 映写機が湿気などにより錆がでている場合は、オイル拭きをする。
- 必ずプレートとスケートは清掃、研磨すること。
[2]通電前の点検
- 操作ボックスやモーターの回路の絶縁チェック。
- テスター等で、操作線などがアースに落ちていないかチェック。
- ランプハウスのランプの+と-の絶縁を特に注意する。
以上を点検したらブレーカーを入れる。
[3]モーターの始動
- 1ヵ月以上使用していない場合、手でモーターノブを回して重さと異音がないことを確認したら、モータースイッチを数秒入れて回転と異音を確認する(2~3回、モータースイッチのオンオフを繰り返す)。その後動作時間を延ばして、異音チェックをしながらベルトやチェーンを目視する。
- サウンド部にあるオイルゲージを確認する。通常はモーターが回転するとオイルゲージの油面の高さが変化するが、機種により目視できないタイプもある。
[4]映写機のタイプによる対応
A)旧タイプ型(サウンド部とミシン部がセパレートになっている機種)
例:フジセントラル型F1~F120、トキワTCC、インターナショナル、ニュースター、フィレックス、ローヤル(L型・NL型)、センチュリー
- 旧タイプの場合は上部マガジンのシャフト受けがメタルタイプになっているので、オイルを注入する。
- 旧タイプの映写機は裏側の蓋から映写機の裏側にまわり、オイルが循環していることを目視する。
B)新タイプ型(サウンドと映写機が一体のボディになっている機種)
例:フジセントラルF1000~AR、シネフォワード、シネメカニカV5/V8、トキワTSR、東芝TD、キノトン、クリスティ
- 上記の映写機は駆動部分がモーターとベルト掛け(タイミングベルト)になっているので、ベルトの切れ目や変形がないか目視にてチェック。
- 手でモーターノブを回してベルトがスムーズに回っている事を確認する。
- 変形があるベルトは油拭きして一時的に修正するか、交換する。
以上です。内容により、専門の技術者にチェックをしてもらってください。
上田功氏の回答
◎映写機本体について
潤滑オイルが定量入っているか確認する必要があるでしょう。
特に古い映写機は油もれを起こしている可能性もありますから、この点は注意する必要があります。
他にはシンクロベルトなど摩耗がひどくないかもチェックすべきです。シネメカニカの映写機などはシンクロベルトにかなり負荷が掛かり、定期的に交換をしながら使用しているのでこの点も注意する必要がありそうです。
各部品(スプロケット、ローラーなど)については、目視で異常に摩耗している物がなければ問題無いと思われます。
◎通電する前に
電源の漏電(絶縁)位は調べたい所ですね。
映写機が置かれている環境(湿度など)によってもかなり違ってくると思いますが、最低でもテスターでの絶縁測定、出来れば低電圧レベルのメガテスター(200V級)で調べたいところです。尚、メガテスターで測定する際にはCPUの入っている電子機器(CP650など)のコンセントは抜いておいた方が安全です。
石井義人氏の回答
多くの映写機に共通するのは、ゼネバ機構(インターミテントのメカニズム、四つ)に負荷をかけないために、必ずインターミテント・スプロケットが静止している状態でモーターを始動させること、になります。これは実際にフィルムを装てんしている場合でも同じです。その前には、モーターを手回しした感触から映写機内部の機構や潤滑油の状態を何となく感知することが出来ます。覚えのない抵抗を感じたり異音を聞いた場合は何かの異変があることです。
映写機は潤滑油の使い方から見ると、ゼネバ機構を有する独立したタンクの中だけにオイルを浸しておくタイプと、映写機全体を密閉型されたボックスとし、その中で汲み上げて潤滑させる機構を持つもの、の2通りに分類できます。前者は比較的オイル漏れが少ない代わりに油量の不足や劣化は映写機のダメージを大きくする、後者はオイル漏れが発生している場合が多く映写機の設置条件(打ち込み角度、映写速度など)によっても加減する必要があること、など潤滑油の重要性から映写機を見ることができます。どちらにしろ、潤滑油の量、色、漏れ(状況により臭い)を観察することは工作機械を運転する時に共通することです。
山形康人氏の回答
長年動かしていない映写機ですが、最初に4点の確認をします。
図面等があればそれに照らし合わせながら作業したほうが効率的です。
[1]テスターで抵抗値を測定し、漏電がないかを確認します。
長時間使用していないと保存環境にもよりますが部品等の劣化により漏電してしまっている場合があります。そのまま通電してしまうと最悪の場合火災になってしまう場合や、部品等の破裂により修復不能になってしまう場合もあります。
[2]ドライブ方式を確認します。
Cinemeccanicaのようなベルト駆動のものやCINEFORWARDのようなモーターからヘットミシンまでがベルトで、ヘットミシンがギア駆動のもの、昔のFuji centralのような全てがギア駆動のものまであります。ベルトの部分はゴムなので長期間使用していないと劣化していて最悪の場合試験運転中等に切れてしまう場合もあります。ドライブシャフト等がメタル軸受けなのかベアリングなのかも合わせて確認します。
[3]オイルの確認をします。
長期間使用していない映写オイルは酸化等劣化している場合や、ガスケット・パッキンの劣化により漏れてなくなっている場合もあります。そのままで運転させてしまうと最悪の場合インタータンク等重要な部品の破損につながります。劣化しているオイルも同様で、潤滑性能が劣化している場合もあります。
[4]ゴム関係の劣化具合を調べます。
ゴム関係の部品は劣化したまま運転させるといつトラブルになるかわかりません。保守部品があればこの時点で交換しています。
以上の確認ができたらこの先の確認・整備作業へと進みます。
[5]映写機・ランプハウス等の清掃。
[6]手でモーターを回して各スプロケットの動き・異音確認・モーターノブを回した時の引っ掛かり・重み等を確認。異常があれば整備。
[7]スプロケット押さえの各作動部・ローラー部の作動確認・注油。
メタル軸受けの場合注油を忘れずに。
[8]通電して異常がないか確認。
この時にはまだ映写機は動かしません。
[9]ランプハウス等のファンが正常に稼働しているか確認。
[10]映写機のモーターを作動させ異常がないか確認。
この時にオイル循環式映写機の場合はオイルポンプが正常に作動しているか確認を忘れずに。